体軸性脊椎関節炎について知りたい:

体軸性脊椎関節炎について

監修: 独立行政法人 国立病院機構 大阪南医療センター
臨床研究部 免疫異常疾患研究室長 リウマチ科医長
辻 成佳 先生

体軸性脊椎関節炎とは?

体軸性脊椎関節炎とは、背骨や骨盤(主に仙腸関節)に慢性的な炎症がみられる病気であり、強直性脊椎炎と、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎に大きく分けられます。
10代後半~30代の若い時期に発症するのが特徴です1)、2)

体軸性脊椎関節炎とは?

“強直性脊椎炎”と“X線基準を満たさない
体軸性脊椎関節炎”

2つの病気の大きな違いは、X線検査で骨盤に明らかな変化が認められるかどうかです。
骨盤に明らかな変化が認められるものが「強直性脊椎炎」、認められないものが「X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎」です。
X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎が進行し、明らかな変化が認められると強直性脊椎炎になります。その割合は2~15年間で10~25%くらいといわれています3)、4)

体軸性脊椎関節炎の経過5)、6)

体軸性脊椎関節炎の経過

参考資料

  1. 1)

    ⽇本脊椎関節炎学会, 厚⽣労働科学研究費補助⾦(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を⽬指した⼤規模多施設研究」班, 編:脊椎関節炎診療の⼿引き2020, 東京, 2020, 診断と治療社.

  2. 2)

    谷口義典:日本臨牀. 2020;78(8):1314-1319.

  3. 3)

    Poddubnyy D, et al.:Ann Rheum Dis. 2011;70(8):1369-1374.

  4. 4)

    Wang R, et al.:Arthritis Rheumatol. 2016;68(6):1415-1421.

  5. 5)

    Garg N, et al.:Best Pract Res Clin Rheumatol. 2014;28(5):663-672.より改変

  6. 6)

    Deodhar A, et al.:Ann Rheum Dis. 2016;75(5):791-794.

主な症状と症状が起こるしくみ

背骨や骨盤の炎症による首・背中・腰の痛み、からだのこわばりなど、さまざまな症状があらわれます。
良くなったり、悪くなったりを繰り返しながら、徐々に症状が進むといわれています。

主な症状

体軸性脊椎関節炎の主な症状

腰の痛みは特徴的で、動いたほうが楽になる

特に腰の痛みは特徴的で、安静にしているよりも、むしろ動いたほうが痛みが軽くなります。この特徴的な腰の痛みを「炎症性腰背部痛」といいます。

痛みやこわばりは大量に作られる
サイトカインが関係

こうした症状は、炎症を起こす「サイトカイン」という物質が関わっていると考えられています。サイトカインは免疫機能の調節や炎症などに関わるたんぱく質で、そのなかでも炎症の原因となるものが炎症性サイトカインです。遺伝的な要因(病気になりやすい体質)に、物理的刺激や腸内細菌バランスの崩れなどがきっかけとなって免疫異常が起こり、サイトカインが大量に作られるようになります1)。これにより炎症が起き、痛みやこわばりがあらわれます。炎症性サイトカインにはいくつかの種類があり、IL-17A(インターロイキン・17・エー)などが深く関わっていると考えられています1)

体軸性脊椎関節炎とサイトカイン(イメージ図)

体軸性脊椎関節炎とサイトカイン(イメージ図)

症状が進むとさまざまな動作が困難に

強直性脊椎炎では、両側の仙腸関節からからだの上方向に症状が進むことが多いです。

強直

脊椎周辺、すなわち腰背部、殿部、項部、時に股関節や膝関節の疼痛、全身のこわばりや倦怠感、発熱などが主な症状で、病状が進むにつれて次第に脊椎や関節の動きが悪くなり、20~30%の症例では、脊椎が骨性に固まって動かなくなる、すなわち強直を生じることがあります(竹様脊椎bamboo spine)。まれに股関節にも強直が起こり、人工関節置換術が必要になることがあります7)

参考資料

  1. 1)

    日本脊椎関節炎学会, 厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患政策研究事業)「強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究」班, 編:脊椎関節炎診療の手引き2020, 東京, 2020, 診断と治療社.

  2. 7)

    難病情報センターホームページ:強直性脊椎炎(指定難病271)(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4847[2022年4月現在])

診断について

臨床症状や画像検査、血液検査などを参考に総合的に診断します。
腰の痛みがみられる病気は多く、ほかの病気と区別する鑑別診断を行う必要があります。

臨床症状

診断において腰や背中の痛み、からだのこわばりなどの症状の確認はとても重要です。
体軸性脊椎関節炎でみられる炎症性腰背部痛は、一般的な慢性腰痛とは特徴が異なるため、体軸性脊椎関節炎を疑うきっかけになります。

炎症性腰背部痛8)

3ヵ月以上継続する腰・背中の痛みがあり、次の5項目のうち、4項目あてはまれば炎症性腰背部痛の可能性があります。

  • 40歳未満で発症

  • 発症が緩徐

  • 運動で改善

  • 安静で改善しない

  • 夜間の疼痛
    (起床で改善)

②発症が緩徐
いつ、どこで、何をしていたときに発症したのかがわかる場合は“急性”発症であり、明らかな発症日時や行為が特定できない場合(例:「夏ごろから痛くなったなぁ」)は“緩徐”な発症となります。

画像検査

検査画像
  • 画像提供:辻 成佳 先生

X線検査やMRI検査で背骨、骨盤の状態を観察します。初期段階の骨の変化をみつけるにはMRI検査が役立ちます。

血液検査

体軸性脊椎関節炎ではからだのなかで持続的な炎症が起きているため、炎症反応を評価するCRPというマーカーが増えているかを調べます。
また、体軸性脊椎関節炎と関連があるHLA-B27という遺伝子の型をもっているかどうか確認することもあります(健康保険の適用外のため主治医との相談が必要です)。

参考資料

  1. 8)

    Sieper J, et al.:Ann Rheum Dis. 2009;68(6):784-788.